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MEDIA X AOYAMA POROSITY開設にあたって──青山コミュニティラボ所長 杉浦勢之
March.01.2021PRINT THIS PAGE

2008年4月青山学院大学総合文化政策学部・研究科が開設され、早いもので12年の歳月が過ぎようとしています。同学部設置の青山コミュニティラボ(ACL)が2009年新たに建設された青山学院アスタジオに「拠」を構えてから11周年となった本年度、旧設のACLサイトに代わり、新たに研究拠点ACLの電子メディア媒体を立ち上げることとなりました。

ACLは、学部研究科にとどまらない学術的・実践的研究の場として、青山の地から研究ならびに情報提供、都市、メディア、文化芸術、政策等に貢献しうる分析のためのデータやツールの提供を目的として出発しました。その初志に基づき、新たなメディアを通じてさらなる活動を進めていくことといたしたいと思います。

本メディアはMEDIA X AOYAMA POROSITYと名づけられました。その含意について、いささか申し上げたいと思います。20世紀末このかた、メディアは大きな変革の時代に突入しました。新しい技術変革を通じ、従来の通信、放送という垣根が取り払われ、我々のコミュニケーションのあり方も激変することになりました。その結果、これまでの知のあり方、人間関係や社会のあり方も大きく変りつつあります。技術変革に先導された政治、経済、文化の変容にどのように人類が適応していくのか、あるいは人類がもう一度主導性を発揮し、より望ましい変化と未来を生み出していくことができるのかが見通せない時代になったと言えます。

これまでの時代であれば、リアルな空間とバーチャルな空間は截然と分かたれていました。しかし、メディア革命に突入した現代では、そのことも疑わなければならない時代になったのかもしれません。街は電子の粉にまみれ、輝きを増しています。見えない都市が見える都市に包まれているかのようです。しかしその陰で地方は闇に沈みかねない状況にあります。世代のつながりは広がったかのように見えますが、かならずしもその濃度を高めてはおらず、世代間の認知ギャップはきわめて大きなものになりつつあります。翻ればメディアが人類史を大きく変えた時代として、人類が音声言語と並行し、文字言語を生み出し、それらを組み合わせることで世代を超えて文化と文明を生み出した時代、あるいは電磁波をコントロールし、遠隔地間コミュニケーションによるグローバル化を推し進めた時代がありました。現代は、それと比肩する、あるいはそれ以上の変化が起きるかもしれない特異点(シンギュラリティ)に向かっていると言えるでしょう。(もちろんこれはカーツワイルなどの議論とは一線を画してのことです)。

このような時代におけるメディアはどのようなものであるべきなのか、あるいはどのような可能性に開かれているのか、このことを探り、構築していく実践的研究は、対象領域研究の成果やコンテンツの発信と同等の知の挑戦になり得る、それがメディア研究を研究の柱の一つに掲げたACLの新メディア発足の趣旨となりました。このためまだ名指すことのできない「来るべきメディア」を「MEDIA X」としています。これをAOYAMAから発信するとともに、研究共同体であるACLがこのメディアを通じて外部と内部とが相互に浸透し合い、常に創造行為が生成する「多孔空間」となっていくことを目指し、「AOYAMA POROSITY」と名づけられました。

MEDIA X AOYAMA POROSITYは、ACLに集う研究者(シニア)や学生(ジュニア)の表現の場でもあり、メディア運動体でもあります。これから様々な研究成果、研究報告、作品を発信していくとともに、テキストだけでなく、画像、動画、電子アーカイヴ、分析ツールBOXなどの形で進化し続け、「X」を追求していきます。これからも多くの人々のコミットメントを期待いたします。

杉浦勢之(青山学院大学総合文化政策学部教授)

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